《MUMEI》

「はい…」
 叶人はカナから少し離れ、カナは彼に言われた通り、彼の前で立つ。溢れた熱は重力に従い、太股から脚へと伝って、足元へゆっくりと落ちていく。
(早く…吸い上げて…)
「叶人さん…」
 ―脚を伝って、ソファーに染み込む前に舐めて。
「オシオキだって言ったよな」
 叶人はカナの期待に応えようとしない。カナの脚を伝う蜜を見ようともしない。  蜜の伝う内腿は触れられず、濡れてないところばかり撫でられる。
(叶人さん…カナの厭らしい液体に触るの嫌なのかな…)
「もう少し、近くに来い」
 カナは叶人との間を狭めた。
 ―ちゅ…。
「………ぁ」
 叶人の唇がカナの太腿に、フワリとやわらかく、触れられる。
「感じてるのか?」
 叶人がクツリと笑う。小悪魔みたいにいじわるな微笑みにカナはドキリとしてしまう。
「………」
(…物足りないけれど)
 本当のことを伝えたいけれど、なかなか言えなくて。カナはただ口をもごもごと動かしていた。
「…どうしたんだ?言いなよ」

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