《MUMEI》

「…まだ、結奈を“こっち”に行かせるべきでは、天海に会わせるべきではなかったと思うんだ」
「どういうことなんですか…?」
「結奈のことを話そうか」
 黒宮さんのことか?
「結奈は…“愛”を知らないようなんだ。人間ってさ、親に育てられるだろう?」
 親と居る時間が一番長いはず。次に学校の先生ぐらいかな?
「結奈は違う。生まれて直ぐに引き離されて、親の顔なんて覚えてないんだ」
 親の顔がわからない…?
「将来、一族の頂点に立つ存在になるからかな…。乳母も教師も厳しくて、やりたいことが言える状況じゃなかったのさ。ストレスを溜めすぎて、解消させる術をあまり知らないから、あんなことしかできないんだ」
 だから、あんな態度だったんだ…。多分、同年代とあまり関わっていないんだろな。
「結奈は業とやってる訳じゃない、それだけはわかってやってほしい」
 彼女の寂しさを埋めて、ストレスを解消させたらあの性格はどうにかなるのかな…?
「そうしてくれるかな?」
 まさか、オレの…。読心術をつかった!?
「全部バレてるよ?最初っからね」
 …と言うことは…。

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