《MUMEI》

「うん、以外と近いね!ここなら行けそう」

そして、人間界への入り口の門をくぐり抜け、目的地まで走って行く。


「あれ?ここで合ってるよね…?」

目的地までついたはいいが、人が多すぎて何が何やら……

「おーい、好音!こっちこっち」

「あ…健志!!」

キョロキョロ見回している私に声をかけてくれた健志の方を向いて、私はホッとして健志に近付く。健志の目の前まできた途端に、健志は腕の中に私を抱き寄せた。

「ちょっと、健志!?確かに会うのは久し振りだけど…そこまでしちゃう!?」

慌てたり困ったりした様子で私がそう言うと、健志は少し寂しそうな顔で言った。

「あはは…好音は相変わらず鈍い…じゃなくて、元気だね。」

「うん、私はいつでも元気だよ〜!」

あの日以来、健志は私と会うときだけ顔が赤くなったり、寂しそうな顔をする回数が増えた。最初は心配してたけど、健志自身が大丈夫って言ってるから気にしないことにした。


「そう言えば…制服変わったね!少し前までは、全身黒いやつだったのに」

「ああ、前のは学ラン。いま着てるのはブレザー。学校変わったからね」

「確か…転校?ってやつだよね?」

健志は頷いた。人間界のことを勉強してるから、少しは知っている。健志は、通っている学校が変わったため制服も変わったのだろうと、すぐに気がついた。


「学校でいじめられてたことを両親に相談したんだ。そしたら、転校の話がでて…」

健志は、目一杯笑って話してくれた。妖狐村にいたころよりも良い笑顔だ。

「健志は、今楽しい?」

私は思わず聞いていた。と、その時、健志の口から以外な言葉が出た。

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