《MUMEI》
バレそうで…
「晴とは、どこまで仲良くなってるのかな?もしかして、もう親友なの?」

桐生はキョトンとしていた…そして私は青ざめた。

(な…何言ってんだ、この親父…!!)

そこで私は気づいた。父さんは桐生に、私が女だとバラすつもりなのだと。

「あのな、父さん…桐生とは、つい1ヶ月前まで毎日ケンカしてたんだぞ?そんな簡単に親友になれるわけ…」

「はい、最高のダチです!」

私の話を遮って、満面の笑みで桐生は言った。

(こっのヤロウ…黙ってろよ!!)

心の中でそう突っ込んだが声にはしなかった。

「そうかそうか〜、良い友達ができたな、晴!ところで桐生くん、そんな最高のダチの秘密って知りたくない?」

来た…父さんはいつも何かしら探りを入れて様子を伺ってから本題に入る。今回の会食でも然り…私が女だっていう秘密をバラされる訳にはいかない!!


「秘密?そんなものあるわけないよ。この僕がバラされたくない秘密なんかあるとでも?」

(し…しまった!!この言い方はまずい!!)

私は慌てて言い直した。

「いや、そうじゃなくて…父さん、仮に僕に秘密があったとして父さんがそれを知ってたとしても、僕のいるこの場で出す話題じゃないと思うけど?」

父さんも桐生も疑わしそうな顔で私を見た。父さんが何か言おうとしていたがそれより先に桐生が口を開いた。
「橘自身の口からじゃないと、聞いちゃだめだと思うので、聞かないようにします」

ハッキリとした声で言った。その言葉に、私は救われた。

「そうか〜、桐生くんがそう言うなら仕方ないね。」
私は桐生に少し感謝しつつ最後まで父さんを見張っていたが結局何事もなく会食は終わった。

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