《MUMEI》

「好音や、お祖父さんのおかげで楽しくやってるよ…ありがとう。」

今度の笑顔は優しかった
そして不覚にも、私はその笑顔に引き込まれてしまっていた。私は顔が赤くなっていくのが一瞬でわかった。


「あれ…顔赤くない?大丈夫?」

健志が私の顔を覗き込むが私は慌てて顔を隠す。

「待って!!み…見ないでっ!!」

しばらく経ってから、健志が見透かしたような顔をして私の目を見た。

「……ふふっ、あともう少しってとこかな?」

そう呟いたあと、健志は強引に、顔を隠していた私の手をグイッと引っ張った。

「言っただろ、覚悟してって。…これからが本番だからね」

今にも顔と顔がくっつきそうな距離でそう言った健志に、変な動悸がする私。


「あ…あれぇ!?どおしちゃったのかな、私…!?」

「それを、俺がこれから教えてあげるって言ってんだけど?」

私は、動悸がひどくなっていくのがわかった。健志は、慌てふためく私を見て笑っていた。


私がこの動悸の、この感情の意味を知るのは、もう少し先のお話。

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