《MUMEI》
猟奇
私は気になっていたことを山本に聞いた。

「山本さんはいつ高科が犯人じゃないって気付いたんですか?ずっと資料を読み返していましたよね、そこに何が書かれていたんですか?私には分かりませんでした」

「あの資料に書かれていることは、99パーセントが高科が作り出した、嘘の世界だ。
その中で矛盾点があった。俺は里緒に掃除機の改造について聞いたことがあっただろ覚えているか」

「はい、覚えています。でもあの改造にそんな不信点は無かったと思いますが」

「それは機械について詳しいから逆に気が付きにくいのかもしれないな」

「どういうことですか」

「このことは始めは誰も気がつかなかったんだ。警察は勿論、うちの組織の人間でさえも。
だがそんなに難しいことじゃない。

犯行中にからくり時計が鳴り出したという記述があった、それによって犯行の時間などが正確になったと。

だがそんなことはありえない」

「ありえない?どうしてですか」

「人の体を吸い込むほどの吸引力だぞ。凄い音がしてたはずなんだ。それなのに音を聞いていたというのはおかしくないか」

「でもからくり時計ですよね。音が聞こえなくても、何かが動き出した、それに気がついただけなんじゃないですか。こういう時って神経が研ぎ澄まされているという人は多いですよね」

「いや、高科は音を聞いたとはっきり言っている。耳栓をしないで掃除機を使うことも出来ないし、ましてや掃除機を使っている最中に音を聞くなんて不可能だ」

「……そうかも知れません。だけどどうして警察はこのことに気がつかなかったんですか」

「それはこの事件が猟奇的であることからこう言った小さな部分は取り上げられなかった。

簡単に言うとこの犯人は頭がぶっとんでやばい奴、そういう認識だった。

猟奇的な部分ばかり注目されたんだ。

掃除機を使っての殺人。

そして犯行後約2日たってから現場に戻り、死体をぐちゃぐちゃにした。

こんな犯行をするのは異常者だけだ。だから高科の言葉の一つ一つには何の重みもなく、流されるように取り調べは進んで行ったんだ」

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