《MUMEI》

「三浦、今日もあの子来てたわよ」
その日の講義も全て終了し、帰宅の途へと着こうとした矢先だった
何やら外を眺めていたらしい昨日の知人がある一点を指差した
何の事かと三浦もそちらを見やればそこに、昨日の少女の姿があった
三浦の姿を見つけるなりその表情が僅かに明るくなり
少女は小走りに三浦の元へ
「お前、わざわざ来たのか?」
よく大学までの道を覚えていたと驚けば
相手は俯いたまま、頑張ったとだけ返してくる
「…… もしかして、結構迷ったか?」
頑張ったということは頑張らなければいけない何かがあったわけで
ソレを指摘してやれば、相手は素直に頷いた
「……道、難しい」
僅かに頬を膨らませる相手
三浦はフッと肩を揺らすと、相手の頭へと手を置いてやり
「よく頑張ったな」
えらいえらいと撫でてやる
まるで子ども扱いのソレに、だが相手はされるがままでr
暫く撫でてやった後、三浦たちは取り敢えず大学を後にすることに
帰宅の途に取り敢えずは着いたのだが、まだ夕飯には早い時刻
さて、これからどうしようかと三浦は考え始める
何処か行きたい処はないかとを尋ねてやれば、どこでもいいとの返答
ソレが一番困るのだがと三浦がさらに考え込み、そして結局
「うちで、いいか?」
そこに落ち着いた
相手がそれでいいと頷いたのを確認すると、二人連れ立って帰宅
途中、相手が徐に三浦の服の裾を引き、何かと振り返ってやれば
「……ご飯の材料、買う」
道沿いに在るスーパーを指差した
そう言えば食べるものが何もなかったと三浦も思い出しスーパーに立ち寄る事に
中へと入り、相手は籠を持つと足早に店内を進んでいく
「……これ、安い」
そして手に取ったのは、五個セットの袋麺
ソレを籠へと入れようとする相手
一人の時はいつもこんな食事をしているのだろうか?
なぜかそのことが気に掛り、三浦は相手からソレを取り上げた
「何?」
何をするのかと上目遣いで睨んでくる相手へ
「俺と食う時はそういうの無し。ちゃんとしたモン食え」
「ソレ、駄目?」
「だめってわけじゃねぇけど、折角だったらちゃんとしたモン食わせてやりてぇし」
だから、とソレを棚へと戻す
改めてないが食べたいかを問うてやれば
「……なら、オムライス」
と控えめな返答
三浦は僅かに肩を揺らすと、ソレに必要な材料を籠へと入れていく
「……ピーマンは、嫌」
三浦がソレをかごへと入れかけると相手が首を横へと振って見せた
嫌なのかを改めて聞くと、素直に頷いた
「ま、無いと出来んってモンじゃねぇし」
無しでいいか、とソレを戻す
材料も大体揃い、清算を済ませると三浦たちは帰路へと着いた
帰り道、並んで歩きはするが互いに交わす会話は少ない
今のこの関係は一体何なのだろうか?
友人でもなく、ましてはや恋人でもない
分からない現状に僅かに首を傾げる三浦
だが考え込んだところで仕方がない、とp家に帰りつくなり食事の支度に取り掛る
「私も、手伝う」
台所に立つ三浦の傍らへ相手も寄り添う様に立つ
何か手伝う事は無いかを問われ
三浦は暫く考えた後、卵を三個ほど相手へ手渡す
「ソレ割って掻き混ぜといて」
泡だて器も同時手渡してやれば、相手は頷いた
袖をまくり上げ、泡だて器を握ると、なれた手つきで混ぜ始める
なかなかに手際がいい、と感心して眺めていると相手は手を止め
「これで、いい?」
出来上がりを三浦へと問うてきた
三浦は指でOKを出してやると、ソレを焼き始める
甘いバターの香りと卵が焼ける香ばしい匂い
自然と相手の表情がほころんでいくのが知れた
余程好きなのだろうと三浦は肩を揺らし、そして出来上がったオムレツを皿へ
「……美味しそう」
食べてもいいのかとの相手へ
三浦はどうぞを返すと相手へとスプーンを渡してやる
本当にうまそうに食べる
その様を見ながら、三浦はフッと肩を揺らしていた
ソレに気づいたらしい相手がどうしたのかを問うてきたのだが
三浦は唯何でもないを返す
自分用のオムライスを手早く造ると相手と向かい合う様に座った
「そういえば、お前の名前、聞いてなかったな」
食べ始めてすぐそのことを思い出し、三浦は改めて名前を尋ねる
相手は食べる手を止める事はせず
「……華。佐藤、華」

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