《MUMEI》
少女の言葉を思い出す
番人は、優しい言葉をかけるでもなく、落ち着かせる素振りを見せるでもなく、ただいつもの口調で、どこか淡々とした言葉を投げかけた。

「トラウマのスイッチ入っちゃった〜?でもねぇ、俺も急いでるからさぁ〜早くグチッちゃってよ」


番人は、老人の顔に自分の顔を近づけて、やや脅しているふうに、口元は笑っていても軽く睨みつけていた。

すると老人は、番人の顔を見ずにどこか遠くを見つめながらあの日のジョーカーのことを話しだした。


「あいつは…ジョーカーは……いきなり俺達のアジトを壊滅状態に陥れたんだ……」

「うんうん、それで?」

「仲間を八つ裂きにした後に、今度は俺に銃を向けて…今でも痕が残るぐらいの傷を負わせて…去った」

「……それだけぇ?」



番人は肩の力が一気に抜けた。


やはり何の手掛かりもなかったか…と、次の目的地に移動しようとしたそのとき、老人がまたもや口を開いた。


「そうだ…あいつは俺を殺しかけた後に、独りでこう呟いてたんだ……」


老人は相変わらず遠くを見つめているようだったが、さっきまでの弱々しい声とは違って、ハキハキと喋っていた。


老人の言葉に耳を傾ける番人。



「『これであと約9万4千7百だ』って言ってた…」


(何かの数字…?)


いまいちピンとこなかったが、何かしら情報を提供してくれたのにはかわらないため、番人は老人にお礼を言ってその場を去った。



「振り出しに戻ったなぁ…てか、更に謎が深まっただけかも?」


などと、ブツブツ言ってる様子だが、番人は次の目的地へと旅立った。

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