《MUMEI》 帰り道「悪い、待たせたな」 「いや、俺もついさっき店出たとこだし」 私がやっているバイトは朝9時〜夕方6時までだった。 彩原が店に入って来たのも閉店1時間前だったため、あまり待たせることなく待ち合わせ場所である近所の公園まで来れた。 「それにしても…」 帰り道、一緒に帰っていると、私の方は見ずに真っ直ぐ前を見据えて喋りだす。 「なんでいきなり一緒に帰ろうなんて言ったの?」 「別に…たいした理由はないけど。……ただ」 「ただ?…何?」 「最近彩原とは話してないなーって思っただけ」 「ああ、確かに」 嘘ではなかった。 最近は桐生とばっかり話していたせいか、彩原との会話を疎かにしてしまっていた。 私の中で何かが引っ掛かっていたから、またこうして話せて嬉しかったりする。 「そう言えば、今日は桐生も店に来たんだよな」 「ああ、アイツお化けとか密かに好きだからなー」 「へぇ、知らなかった」 「……え?」 突然彩原が立ち止まった そして何故か訝しげに私を上から見下ろし、これまた意外な質問を投げ掛けてきた。 「桐生がなんで学校の成績で一番にこだわってるか知ってるか?」 「さあ?そんなの知らないし、知ろうとも思わないし」 「桐生の誕生日とか趣味とかは?」 「んなもん知ってどうするのさ?」 歩みを止めたまま、彩原の質問に正直に答える。 だが、よりいっそう彩原の顔がなにやら歪んでいった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |