《MUMEI》 テストみたいに簡単じゃない『冷めた奴だとは思わなかった』 彩原のあの言葉が、 胸に焼き付いて離れない 思い出すたびに心が苦しくなってくる。 (ああもう、気になって仕方ないじゃんか!) 「橘さん?大丈夫?」 「あ…だ、大丈夫です」 私はバイト勤務中だったことを思い出し、我にかえって仕事に没頭した。 その方が、彩原との出来事を少しでも忘れれるからだ。 「橘さん、三日くらい前から様子おかしいけど大丈夫?」 「大丈夫です、心配してくれてありがとうございます。」 「悩みとかあったら言ってね〜!相談に乗るから」 「はい、どうもです。」 一礼してから仕事に戻る (あの人も大概お人好しだよなー…誰かさんを思い出す) そう思ったとき、また彩原との会話が脳裏に浮かんできたので、仕事量を増やして忘れることに専念した。 「いらっしゃいませ!」 私は、相も変わらず作り笑いをして接客した。 だが、彩原とケンカしたあの日以来、上手く笑えていない気がする。 こんな接客態度、良くはないよな… そう思った私は、珍しく裏方の仕事に代わってもらっていた。 前へ |次へ |
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