《MUMEI》 「橘さん、やっぱり何か悩みがあるの?」 「……えっ?」 「ほら、今日はずっとどこかボーっとしてたし」 「あ…すみません!」 仕事が終わり、帰る支度をしていると、店長が気にかけてくれた。 「悩み相談ならいつでも受け付けるって言ったじゃないの!ほら、言ってごらん?」 「あ…えと……」 店長は有無を言わさない様子だったため、私は仕方なく正直に話した。 彩原とケンカしたことを 「そお…その友達が怒ってる理由がわからないのね」 「はい、そうなんです」 「…私は分かっちゃうけどな〜。お友達が怒っても無理ないわ」 「えっ!?私のどこがいけないんですか?」 「だって、普通は友達のこと知りたいって思う筈なのに、橘さんは知ろうともしなかったでしょ?そりゃ冷めた人って言われるわ」 (知りたい…?友達のことを……?) 今まで友達という者がいなかったから 誰かの内側に入ろうとしなかったから ……わからなかった 「……そういうものなんですか、友達って」 「ええ、相手のこと知りたいって気持ちは誰にでもあるもの!」 (…ふぅん……) (それこそ知らなかった) 知らない…… なんて愚かな響きだろう 前へ |次へ |
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