《MUMEI》
マスターキー
まだ、外に人の気配はない。
しかし、きっとそのうち見つかるに違いない。
そう考えた時、ユウゴはふと気付いた。

 ここは学校で、しかも荒らされた形跡がない。
ならば、何か使えるものが残っているのではないだろうか。

 ユウゴは机から下りると、ユキナにも手伝わせようとその横にしゃがみ込み、「おい」と声をかけた。
しかし、彼女はピクリとも動かない。
 きっと体力的にも精神的にも限界まできていたのだろう。
起こすのは可哀相だと、そのままにしておくことにした。


「職員室なら、どっかにマスターキーがあるよな」
 ユウゴは部屋を見回すと、壁にジャラジャラと鍵がかかったキーボックスを発見した。
しかし、各教室の鍵はあれどマスターキーはない。
この鍵を全て持っていくのはさすがに面倒だ。
「どこだよ、マスターキー」
言いながらユウゴは一つだけ離れた位置にある机に近づいた。
おそらく教頭の机だろう。

その引き出しを上から順に開いていく。
 すると、二段目の引き出しに無造作にキーが投げ込まれていた。
先端に付けられたタグにはマスターキーとある。

「……なんつう管理だよ。ダメな学校だな」
 呆れながらその鍵を手に職員室から出る。
一応、念の為にドアに鍵をかけて、ユウゴは校舎の探索を開始した。

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