《MUMEI》

「彩原!待たせて悪い」

「そんなに待ってないよ」
「そ…そっか」



店の裏口へ着くと、彩原が気難しそうな顔をして待っていた。


これは…
一刻もはやく謝らなくては!!!



私は、ぎこちない雰囲気を変えようと、その場でひざまずいた。
…と同時に土下座した。



「怒らせて悪かった!!」





(…ん?)


なんか今、彩原も同じ台詞を吐いたような…



顔を上げて見ると、彩原までもが私と同じく土下座しているのに気づいた。


「俺が悪かった!橘の事情も知らずにあんなこと言ったりして…」

「いやいや、なんで彩原が土下座すんのさ!?なんだよ、僕の事情って?」

「昨日、桐生が電話で言ってたんだ…」

(えっ…こいつらそんなに仲良いのかよ!?)


知らなかった…
というか、意外な事実を知った。


「電話で、橘が今まで友達がいなかったこと知らされたんだ。」

「……!」


あの野郎…チクりやがったな?

「それで…その……」



(ん?)


なにやら口をもごもごさせている彩原。
私は、緊張する中、ただじっと言葉がでてくるのを待っていた。



「冷めた奴だって言ってごめんな、橘」



やっと声が聞こえてきたと思ったら、その一言だけだった。

彩原は、本当に申し訳なさそうな顔で言っていた。

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