《MUMEI》
人間界
人気のないところまで来ると、私は慌てて変化の術で人間の姿になった。


「ふぅ、危なかった…」


もし人間界で平然と妖狐の姿で出歩いたら、今よりもパニック状態に陥るところだった。


「ごめん、好音…調子に乗り過ぎたよ」


状況を察したのか、健志が私に対して紳士に謝ってくれた。私は健志に対して「いいよ」と笑顔で言った。



「ねえねえ健志!まだ仕事までたっぷり時間あるし、人間界観光したいな!」


妖怪の姿を見られたあの人通りの多いところから場所を変え、私達は小さな公園にあるベンチに座って話していた。


「好音、どこか行きたいところがあるの?」

「うん!!ガッコウってところ行ってみたいんだっ」

「学校?」

「皆ワイワイ賑やかだってじーちゃん言ってた!妖狐村より賑やかなんでしょ?一度行ってみたかったんだ〜」



無邪気な子供のように笑いながら言う私は、ハッと気が付き、急に恥ずかしくなってきた。


(やだ、私子供みたい!)


「いいよ」

「…えっ?」

「俺が通ってる学校でいいなら…」


照れ臭そうに言う健志。
私はまた無邪気にぱぁっと笑い、「行く行く!!」と言ってベンチから立った。


そのまま健志の通うガッコウに行くこととなったのだけれど…何故だろう、健志の顔色が悪くなっていく。

そして終いにはぶつぶつと「確かまだアイツ帰ってなかったよな…」等と言っている。


なにかまずいことでもあるのかな?

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