《MUMEI》

俺は危機を察した。


「……文句はないです」



渋々そう言い、
俺は危機を回避した。



「なら良いのよ〜」


よかった、声色が
元に戻った。



「もうすぐでそっち着くと思うから、後はよろしく〜!じゃ。」



ブツンッ!





えっ………

もうすぐ着く!?





俺は私服に着替える事を
忘れ、無我夢中に
エレベーターで
一階まで行った。



なぜか知らないが、
今すぐ向かわないと
理事長から鉄骨を
お見舞いされると思った
からだ。







ポーン…



一階に着いた。


ここまで来れば
もう大丈夫だろう…




俺は落ち着いた足取りで
寮の外に出た。


まだ誰かがくる
気配はない。


「はあぁあぁ……」



俺はひと安心して、
その場に座り込んだ。




「ったく、理事長も無茶苦茶言うなぁ…」



ぼそりと言ってすぐに
立ち上がった。






いけねぇ…
もし理事長が本当に
俺のこと監視してるなら
今の独り言も
聞かれてるんじゃあ…



などと、悪夢を
想像してしまった。






…うん、

黙って待っていよう。










――20分経過――




理事長のやつ…

嘘つきやがったな?



桜っていう女、
来ねぇじゃねぇか!




苛立っていても、
一向に来る気配はない。



「…はぁ、理事長のお遊びか………」




ついに、しびれを
切らせた俺は
自分の部屋に帰ろうと
寮のドアに足を運ぼうと
した。






「あの〜、すみません」




ん…?



女の声………

まさか、『桜』か…?

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