《MUMEI》 桐生ん家にて待ち合わせから1時間後 私達は桐生の家の前にいた。 「勉強会の場所って…桐生ん家かよ。図書館でもよかったのに」 「えー、図書館だと静かにしなきゃいけないじゃん!」 勉強は静かにするもんだろ…… 「桐生ん家って綺麗な外観してるな〜」 私が心の中で思ったことを言おうとしたとき、彩原が私と桐生の話に水をさす。 私は言うのを止め、彩原に話を合わせた。 「そうだな、彩原の言う通り綺麗なとこだよ」 「見た目のデカさは橘ん家には敵わないけどな〜」 「えっ、充分ここもデカいと思うけど、橘ん家もっとデカイの?」 「それなりにはね」 雑談しながら桐生は家の鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。 ガチャッという音と共に桐生ん家の扉が開き、私と彩原はお邪魔した。 「ただいま〜」 「「お邪魔しまーす」」 桐生ん家の中は、外観と同じ…いや、それ以上と言っても良いくらい綺麗だった。 私達は二階の桐生の部屋で勉強することになった。 ……誰もいないのか? やけに静か過ぎる家の中は、どこか寂しさを感じた。 それが気になってしまい、一瞬聞いて良いのか迷ったが、桐生に理由を聞いてみた。 「なあ桐生、なんで家の中誰もいないんだ?」 私がそう聞いたとたん、桐生は寂しそうな笑みをこぼした。 「…仕事でいないんだ」 寂しそうに笑う桐生を見て私は思い出した。 …そう言えば、桐生の父親は仕事第一の人だって前に言ってたな…… 思い出したと同時に私は後悔した。言わなければよかったと思った。 (そっか…いつも仕事でいないから…) 桐生は家ではいつも独りなのか…… 前へ |次へ |
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