《MUMEI》

私が後悔していると、桐生が私の様子を察したのか、無理に笑顔をつくって声をかけてくれた。


「そんな顔すんなよ、橘!なんか、暗くしちまって悪いな!」


その場にいた彩原までもが暗い表情を浮かべていたため、桐生は彩原にも同じ言葉をかけた。



私の些細な言葉が、こういう事態を招いてしまったんだ。…こんなことになるぐらいなら、言わなければよかったな……




その後、すぐに桐生の部屋で勉強会を開始したものの、重く暗い雰囲気は残ったままだった。



カリカリカリカリ……


「…………」


確かに勉強は静かにするものだけど…こんな重い雰囲気の中でやるのは、楽しくないな…
やっぱり、さっきのは密かに疑問に思う程度に納めておけばよかったんだ。
私が口にしたからこんな状態になったんだ。
桐生も彩原も、こんな雰囲気の中で勉強したくて勉強会の計画立てた訳じゃないはずなのに…



そんなことを思いながらやっていたからか、全く勉強に身が入らなかった。

彩原も、私と桐生の次に頭が良いはずなのに、いくつか問題の答えが間違っている。間違えてしまうような難しい問題ではない。



(この空気何とかしなきゃな…でも、何をすれば良いのかわかんない…)


私が心の中で途方に暮れているとき、隣に座っている桐生がシャーペンを持つ手を止め、「あっ!」と言って立ち上がった。



「お茶出すの忘れてた!今取りにいくから、何茶がいい?」


桐生の一言で、一気にその場の空気が変わった。


「あ…じゃあ緑茶で」

「俺も同じの、お願い」

「おう、すぐ戻る」



桐生が部屋を出て行った直後、タイミング悪いことに、私はトイレに行きたくなった。

私は慌てて桐生のあとを追い、トイレの場所を聞いてそこに向かった。

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