《MUMEI》

ジャーッ!


「はあ…家出る前に水がぶ飲みしたからか?」


等と、私は小さい声でブツブツ言っていた。



…正直、勉強会というのは初めてだったため、少し緊張していたのだ。

……まさかこんなことになるなんて思わなかったけど……

それでも家を出る少し前までは緊張していて、落ち着かない様子で水をがぶ飲みしたり家中をうろちょろしたりと、母に心配されるほど緊張しつつも楽しみにしていたのは事実だ。

だから、さっきのことは私に責任がある。
ワクワクし過ぎて、桐生の家の事情に軽々しく首を突っ込んでしまったのだから、きちんと謝らなくてはいけないな。



そこで私は、まだお茶の準備をしてる桐生がいる、トイレ近くにあるキッチンに顔を出した。


「桐生、ちょっといいか?」

「橘?なんだ?」



よかった、桐生の様子を見ると、さっきのことは気にしてないみたいだ。

だが、それとこれは違うからな…謝ろう!


「さっきのことだけど…悪かった!無神経なこと言っちまって…」



桐生は目を大きく見開いて、こっちを見てる。

軽く下げていた頭をゆっくり上げると、そこには、笑いを堪えている桐生の姿があった。


「な…何笑ってんだよ!?こっちが真剣に謝ってんのに…っ」

「ああ、悪い……律儀だなって思って」

「はあ!?」

「そんなに真剣に謝らなくても、橘が責任感じてるってのは伝わってたからさ…なのに、まだ謝るかって思って」


……拍子抜けした。
というか、怒りが沸き上がってきた。

(ああそうだよ、律儀だよ!!悪いと思ったから謝ってんだろうが!!)

なのにコイツときたら……っ!!!!


「お前なぁ…!」


笑いを堪えている…というか、堪えきれていない桐生に対して私が殺気立った表情をしたとたん、突然語りかけてきた。

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