《MUMEI》

「……これが友達か」



友達、という単語の意味がわかった気がする。


深く聞いて傷付け合うかもしれない、元の関係に戻れないかもしれない。

けど、そんなことを気にすることなくお互いの気持ちを伝え合うのが、友達なんだな…きっと。


「…うん、僕もようやくわかったよ。友達ってもんが」


「……っ!!」



少し緩んだ笑みをこぼすと、たちまち桐生の顔が赤くなっていった。


「ま…まあ、わかったんならいい、うん!あっ、もうお茶できたから、運ぶな!」

「ちょっ…桐生!?ふらついてるけど大丈夫かよ?」



(なんだ?今の顔……)

まるで、恋する乙女の顔だったぞ……?


そう思った瞬間、桐生がぎこちない口調で私と、私達を見てワケわからずボーっとしてる彩原に向かって言った。


「な、何ボーっと突っ立ってんだよ、お前ら!用がないなら勉強再開するぞ」


コップいっぱいに入ったお茶を、おぼんに乗せて持っていきながら私と彩原の背中を、おぼんを持ってない左手で軽く押してから先に行った。
後ろ姿の桐生の、チラッと見えた耳がさっきの桐生の顔と同じくらい赤いのに気がついた。


「2人とも、なんかまたケンカしたの?」


桐生の背中を目で追う私に彩原は問いかけた。一応その問いに私は答えたが、どこか心ない答え方をしていた。


「…いや、今仲直りしたところだよ」

「そ…そっか」


感情のこもってない私の声を彩原は少し心配していたようだったが、やがて彩原も考えるのを止め、桐生のあとを追って勉強してた部屋に戻る。私も先に行った2人を見て追い掛けた。


だが、部屋の前まで来ると私は自分の顔が火照っているのに気がついた。

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