《MUMEI》

……結局、仲直りしたのにまたぎくしゃくしてしまった。でも、今のぎくしゃくした関係は、以前体育館でケンカしたときのギスギスした空気ではないため、不思議と悪くないと思えてしまった。



その日は珍しく勉強があまり進まなかった。おそらく、熱があるせいでもあるのだろう。


「じゃあな、2人とも」

「また明日な、桐生」

「テスト頑張ろうね」


日が沈んできたところで私達は勉強を止め、帰る準備をして桐生ん家を出た。
私と彩原は全く逆の方向に家があるため、桐生ん家を出てすぐに別れた。



(はあ…結局あれからずっと目を反らしてしまった…)


だって、桐生が急にあんな顔するからつられちゃって……いや、顔が火照ったのは熱が出たからだってば!!

等と、なんだかもどかしい自問自答を繰り返していた。
すると不意に、ある疑問が浮かんだ。


(じゃあなんで桐生は顔が赤くなったんだ?)


その疑問が浮かぶのと同時に、家へと近付く私の足が段々遅くなっていった。


(あのときアイツ、私の顔見て赤くなったよな…)


やがて私は歩くのを止めその場で俯いてしまった。



(なんで赤くなったんだよ、桐生のやつ…)


う〜ん…と唸るほど悩んでいると、視界が段々霞んできた。熱が上がったかもしれないと思い、目を擦りながらゆっくり歩きだす。



(駄目だ、今は考えれない…)


体がだるくなってきたし本格的に熱が出てきたな…



私は考えるのを止め、早く帰ることだけに専念した。ふらつく足取りで、日が暮れて暗くなっていく道を歩き進んだ。

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