《MUMEI》
風邪はトラブルの原因に
「あらぁ〜、38度超えてるじゃない!今日は学校休みなさいね」



桐生と彩原と勉強会した翌朝、私は風邪をひいたため学校を休むことにした。

たった今体温計で熱をはかったところ、38度4分と高い数値が出た。
母さんが、私の体に毛布をかけてくれたり学校に風邪で休むことを電話してくれたりしたのは助かった。


「ゴホッ…母さん、ありがとう」

「いいから寝てなさい」

「うん……ゲホッ!」


咳をしながら私はベッドに横になった。私が横になってるのを確認すると、母さんは私の部屋のドアまで行き、「あとは使用人が看病するからね」と言い残し、ドアを開けて去って行った。


「ゴホッ……」


私は咳をしつつ、母さんが出て行ったドアを見つめた。

「…まあ、風邪ひいたときはいつもこんなだしな」


(寂しい訳じゃない…)



ただ、寝るまで誰かいてほしい…でも、昔からいつも風邪ひいても誰も傍にいてくれなかった。それが当たり前だと言わんばかりに…

「もう…いいけど……」


誰かに頼ること、誰かに傍にいてもらうこと、誰かにお願いすること……いつから言わなくなったっけ…

もう大分前だなぁ……



熱がひどくなったのか、わずかに開いていた瞼が閉じていく。
とっくに忘れた寂しさを抱いて、誰も来ることのないドアに顔を向けた瞬間私は眠りについた。



(あいつらなら、傍にいてくれるかな……)



眠りにつく直前、そんな馬鹿げたことを考えてしまった。


私の脳裏に浮かんだ2人のよく見知った男の子。

それは……



桐生と彩原だった。

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