《MUMEI》

「どうしたの!?二人とも悶えてるけど…」

「大丈夫…たった今頭突きして私が元気だということを証明しただけだから」

「熱あるかと思ったけど、すこぶる元気だわお前…」
「そりゃどーも」



(ああ、でもまだ痛い…)


ジンジンと痛みが増してきたが、やがてそれも治まり、女とバレないよう毛布で胸を隠しつつ彩原からお皿に盛り付けられたリンゴをもらう。


「サンキュ、彩原」

「食べれる?」

「おう、食べやすい大きさに切ってくれたおかげで思ったより食べれるよ」

「それは良かった」



元気になった私を見て安堵したのか、ホッとしたような笑みをこぼす。


「なんだよ〜、俺だって見舞いに来てやったのに!」

ブーブー言う桐生に、私は辛辣な言葉を放った。


「お前はただ安眠妨害しただけだろ」

「辛辣な言葉やめて!!精神にクるから!!」

「仲良しだな〜」

「彩原、目が腐ってるみたいだから眼科行け」



気がつくと、私の部屋では賑やかな会話が繰り広げられていた。


(あれ……?)


いつもなら独りベッドで寝てたはず…
賑やかなのは初めてだ。


(独り…じゃない)



私はもう独りにはならない……お見舞いに来てくれる友達が2人もいる。


(誰かがそこにいるって、良いな…)



桐生と彩原の喧騒を聞いているうちに、私は眠りについてしまった。

普段ならうるさいと思う喧騒も、何故かそのときだけは心地好かった…

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