《MUMEI》
その気持ちの名は…
次の日、私は学校に行けるようになった。


「おはよー、桐生!彩原!」

「橘!なんだよ、もう大丈夫なのか?」

「元気になって、良かった」

「2人が来てくれたからだよ、ありがとな」

「俺も、橘が学校に来れるようになって嬉しいよ」



下駄箱の近くで他愛ない会話を繰り広げている私達。

(…桐生に近づいても何ともない…やっぱりあれは勘違いだったんだな)


桐生の隣にいても、あのときの熱が上がるような感覚がなくてホッとした瞬間…


「なあ、本当に大丈夫なのか?もっかいおでこ見してみ?」


急に桐生の顔が私の顔に近づき、次の瞬間額と額があのときと同じようにくっついた。桐生の吐息が私の顔にかかり、くすぐったい感じがする。

「おい…何やって…」

「熱計り中」


少し時間が経ってから、私はカアッと身体が熱くなっていった。


「お…おい!!大丈夫っつってんだからほっとけよ、アホ桐生!!」


ゴッッ!!


「いってぇっ!!!?」



私は再び頭突きをくらわせた。


(なっ…なんなんだ!?今の熱い感じは!?)



意味不明な感覚に襲われて情緒不安定になりかけたとき、桐生が私の目を真っ直ぐ見ていたのに気づいた。

「なんだよ…!」

「いや…元気ならいいんだけどさ、もしまた具合悪くなったらすぐ言えよ?お前、人に頼むの苦手そうだし…」


(確かに苦手だけど…)


まさかそこまで見透かされていたなんて…


「まあ、頭突きできるくらい元気なら大丈夫だな!」

ニカッと太陽みたいに笑う桐生に、私はまたもやドキッとしてしまった。


(ああもう、心臓の音うるさい!!)

私は教室までひとっ走りして、動機を抑えようと努力するが、その鼓動の速さは治まらなかった。


「橘ー廊下は走るな!」

先生の注意を聞き入れず私は一目散に走り続けた。


(この気持ち、何だろ…)

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