《MUMEI》
1位と2位
「橘、今日テストだね」

「確か今日は数学と英語だったな」

「明日が国語と世界史だぞ!次こそは首席になってやる!!」

「ふぅん、まあ頑張れ」



…お願いだ…近くに来ないでくれ…
また変な動機がするから!!



あの風邪事件以来、私はまともに桐生と話せていない。一見普通そうに見えてもどこかそっけない感じのしゃべり方になってしまう…

桐生もそれに気づいているのか、私の方をじっと見ていた。


「橘…」

「……なんだよ?」


(やばい、目も合わさずに会話するのはさすがに勘づかれたか?)


「また自分が首席だと思ったら大間違いだからな!!」


(はぁ…?何言ってんだコイツ)


「あぐらかいて居られんのも今のうちだぞ、バーカ!」


そう言い捨て、桐生は自分の席についた。


「ねぇ、今のはケンカ…なのかな?」


彩原がまた心配そうに私と桐生をチラチラ見ている。いちいち心配しなくてもいいのに…と思いつつ、私なりにフォローした。



「まあ、多少はケンカ吹っ掛けられてると思うけど、前ほど敵意むき出しじゃないし、大丈夫だよ」

「そっかぁ、なら良いけど…」


まだ心配している目だ。



(無理もないか…前は本当にギスギスしてたし)


でも今の桐生の様子を見る限り、ただケンカ吹っ掛けられたんじゃなくて、ライバルに対する意思表示にも見えたな。


ぼんやり考えていると、委員長が号令をかけた。今日は委員長が日直だからだ。いつのまにか彩原も自分の席についていて、いつものように授業が始まった。


「起立!礼!着席!」

「授業はじめるぞ〜」

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