《MUMEI》
過去とはすなわち思い出
「いやぁ…あのときを思い出したもんだから、つい…」

「あのとき?」


何のことだか見当がつかなかった。

そのとき、私達の足は自然と立ち止まっていた。



「体育館に閉じ込められたときの、ギスギスしてた瞬間をさ」

「……ああ!あれか」


(委員長に閉じ込められたあのハプニング…でも、なんでそれを思い出しただけで笑うんだ?)


「あのときは俺ら、めっちゃギスギスしててさぁ、毎日ケンカしてたよな」

「あ…ああ、というか、お前がケンカ吹っ掛けて来てたんだけどな」

「あんときは悪かった」


(へ!?何を急に…)


「お前の家の事情も知らずに、毎日ケンカ吹っ掛けて…悪かった」


(今頃かよ…でも、悪いとは思ってくれてたんだ)

私は頭を下げる桐生にでこぴんして頭を上げさせる。


「なっ…!?人が謝ってるってのに、お前はっ」

「いや…とうとうバグったかと思ってな。さてはお前桐生じゃないな?」


私が下からまじまじと見つめて言うと、桐生が怒りをあらわにした。


「なんだよ!!素直に謝ったらすぐこれかよぉ!!」

「あははっ!だって桐生、いつもは素直じゃないし」

「んだとぉ!?」



私と桐生がギャンギャン騒いでいると、自転車に乗ってる人や歩いてる人等に注目されていたため私達はそれに気づき、場所を公園に移した。



「はぁ〜、面白かった」

「あー恥ずかしかった」


そのときにはもう桐生の怒りも収まり、公園のベンチに腰かけていた。



「なんか飲むか」

「じゃあ僕が買ってくるよ」

「いんや、俺が出す!お前は何飲む?」

「んー…ブラックコーヒーで」

「おっさん臭がするな…今どきの高校生はブラックじゃな…」


バシコーンッッ!!


「さっさと買ってこい」

「……あい」


おずおずと自販機に向かい、飲み物を買う桐生。

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