《MUMEI》
更にややこしい事態
―お昼休み―


「戸田くん…これは一体……?」


私は今の状況に絶句していた。

(なんでこの人達がいるのよ…!!)


「なあ戸田、初めて花崎さんと昼飯一緒だよな。緊張する〜!」

ひそひそと話すクラスメートその1、中瀬くん。


「花崎さんっていつも一人だから、話しづらいんだけどぉ〜…」

ひそひそと話すクラスメートその2、葛(つづら)さん。


(私は確か、戸田くんと2人きりで昼食を…と思ったのだけど、何故こんな状態に…?)


そう思い軽く戸田くんを睨んでみたが、どう捉えたのか、ニッコリと爽やかな笑顔が返された。


(睨んだのに笑って返されたわ…何故に?)


二人きりにならないと目的を遂行できないのだけど……まあいいか。いつも通り人間観察しちゃおう。私が話しかけても相手は困るものね。


そう思って無言で弁当を食べる私。


「自分から誘っておいて無言とか、ちょっと感じ悪くなぁい?」


葛さんがぼそっと言い、「そんなこと言うなよっ」と中瀬くんが慌てた様子で言った。ひそひそ話なんだろうけど、私地獄耳だからばっちり聞こえてるわよ。


「なぁ花崎!その弁当めっちゃ旨そうだな!唐揚げ貰っていい?」


若干この場の空気が悪いことにも気付かず戸田くんは私の弁当をキラキラした眼差しで見てそんなことを言った。


君、ある意味勇者だね。


「ええ、どうぞ」


「サンキュー!うわ、めっちゃうっま!!お前の母さん料理上手なのな!」


「母親じゃないわ。私が作ったのよ」


「「「えっ!?」」」


聞き耳を立てていた葛さんと中瀬くんも一緒に驚いていた。……何か驚くこと言ったかしら。

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