《MUMEI》
桐生の視点では
第一印象・生意気な秀才


一学期の始めのテストで思った、まぎれもない橘への気持ちだ。


「橘!テストどうだった?」


(今の声は…彩原か)


入学早々になにかしら先生の頼み事を引き受けたりした、超がつくほどのお人好し…というのが当時の見解だが、友達になりたいって気持ちはその頃からあった。だが……


「多分満点かな」


しれっとした顔で言う、ちょっと冷めた感じの雰囲気な奴とよく一緒にいるから、話しかけづらい。


(確かあいつ…橘って奴だっけか?あいつ、絡みにくいもんな…しかも生意気だし)


自分で満点とか言っちゃって…ふんっ!俺が首席なのは変わりないっての。



だがしかし。



「すごいね橘、首席だよ〜!」

「中学のときと一緒だよ。常に首席だったし」


(馬鹿な……俺が2位だと!?)


あり得ない結果に驚愕したと同時に、俺の中の何かがキレた。

俺は橘のいる方に歩きだし、子供みたいなことを言ってしまった。


「今度こそ俺が首席になってやるからな!!今に見てろよ、橘!!」


橘も彩原も、はぁ?という顔をして俺を見つめている。

(やって…しまった……)


我にかえったときには、手遅れになっていた。


(どうしよう…やらかしてしまった…)


なんとか挽回しようと言葉を絞りだそうとするが、なかなか言葉が出てこなかった。
硬直していると、橘が俺の横を通り過ぎる際に、俺のストレスがMAXになる原因となる言葉を放った。



「順位気にするなんて、ばっかみたい。2位だからって僕に当たるなよな」

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