《MUMEI》 「ナカ、お父さんとお兄ちゃんが来たわよ」 一階リビングに着くと、小綺麗にした母が待っていた。 「ちゃんと挨拶してね」 私は小さく頷いた。 といっても、まだ声を出せる自信はないけれど。 ピンポーン 「はいはーい、今行きまーす!」 母が速足で迎えに行った 私もゆっくりと後を追う 「やあ、美世さん。」 「吉晴さん!久し振りねぇ…あ、あなたが久喜くんね?さぁあがって!ナカもいるから」 「はい、美世さん。お邪魔します」 聞こえてきたのは、丁寧語の優しそうな清んだ声。 顔をチラリと見ると、かなりの美形だった。 「…あ、君がナカちゃん?君の兄になる久喜です、よろしくね」 私に気づいた久喜さんが手を差し伸べてそう言った。私も挨拶しなきゃと言葉を紡ごうとするも……まただんまりしてしまった。 「あれ?嫌われちゃったかな?」 「ごめんねぇ久喜くん、この子人見知りで喋ることがあんまりないの。気にしないでね」 「これから打ち解ければ良いだけの話だしな。美世さん、中に入って良いかい?風が冷たくて…」 「あらごめんなさい!じゃあ二人ともあがって〜」 母は二人を部屋の奥へと案内した。 また、喋れなかった…… 前へ |次へ |
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