《MUMEI》

鍵を開けた。

“ガチャン”


将太が部屋に入ってきた。
ばっ!とドアから離れてベッドの上に飛びのって布団のなかにかくれた。


「はる、出てきて?」


さっきとは変わって、将太の声は優しかった。
そうだ、毎年将太は、バレンタインは私に対して一段と優しかった。

そっと、顔だけだした。


ヤキモチをやいて恥ずかしいのと、将太が優しくて嬉しいのといろんな気持ちがぐるぐるしていた。

「ごめんなさい。」


自然と涙が出てきた。涙と一緒に素直な気持ちも出てきた。

「将太が他の女の子たちにいっぱいチョコレートもらってくるのがやだ...」


ぽろぽろ涙がこぼれた。
将太は、自分が着ているパーカーの袖で私の涙をぬぐった。


「だから怒ってたの?」

「うん...」

「はる、こっちみて?」


真っ赤な目で、将太を見る。


「春のこと好きだよ。」






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