《MUMEI》

慾深い人間の匂いを探し辺りを飛んで回る
仄かにその匂いを感じ取った山雀が辿って到着したのはヒトの街
そこを飛んでみるさなかに、その匂いをひどく間近に感じた
何処から香って来るのかと見やればそこに
その香を柔らかく放つ幼い少女がいた
「……あれ、か」
姿を捉えるなり山雀は降下することを始め
降り立った先はそn少女の目の前
突然のソレに少女は何事かと驚いた様な表情
山雀はだが何を説明してやる事もせず少女へと手を伸ばし
そのか細く華奢な首をへし折っていた
ああ、ヒトというのは脆すぎる
首を失い崩れ落ちていく身体を眺め、そんなことを思ってしまいながら
山雀は身を翻し、その場を後に
巣へと戻れば雛鳥が山雀の脚元へと擦り寄ってきた
「……食うか?」
持ち帰ってきたソレを雛鳥へと差し出してやればソレを啄み始める
その様を暫く眺めた後
山雀は徐にソレをわずかばかり取り、傍らに横たわる相手の構内へと押し込んだ
ソレは喉を通る筈も、咀嚼できる筈もなくそのままの形で残る
自分は一体何をしているのだろう、既に死んでいる人間に対して
自分自身が取った行動に山雀は嘲笑を浮かべ
口内からソレを引き出すと、そのまま投げ捨てていた
「……本当、つまんねぇな」
先の朱鷺の言葉をまた繰り返し
指先に付いてしまった血液を舐めとる事をする山雀
「……不味」
広がる鉄の生臭さに表情をゆがめながら
ソレをうまそうに貪る雛鳥と、山雀は唯々眺め見るばかりだった……

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