《MUMEI》

「橘って、女みたいなにおいするな…」


ぼそりと呟いた直後、また俺は激しく後悔した。


(何を言っちゃってんだ俺!?ここは男子校!!男しかいないはずだろうがっ!!ほ…ほら、きっとアレだ…シャンプー間違えたとかだ、きっと!!)


橘にとって不快なことを言われたからか、暗闇の中暴れだした。短い間になんやかんやあったが、数分後には落ち着きを取り戻した。


「なんか話さねぇ?」


落ち着きを取り戻したはいいが、沈黙が続くとさすがに空気が重くなってくると思い、なんとか話題を探そうとしたが話題が見つからなかったため苦し紛れにそう言った。


「なんかって、何を話すんだよ?」


(痛いとこ突いてくるなぁ…)


そして俺はまた苦し紛れに「お互いの家の話…とか?」と言ってしまった。


「じゃあ、桐生からどうぞ?」

「俺からかよ!?」


橘も、話題がないからかノってきた。そして俺は自分ん家の事情を話す。昔は貧乏だったのに今は父親が大企業の社長だということ。……正直言うと、ついさっきまで天敵だと思ってた橘に家の事情を話すのは躊躇したが、自分から言い出したために断ることができなかった。



「次は橘の番だぞ!」


橘の顔にしんみりした表情が浮かんだため、無理矢理空気を変えた。


(しんみりすんの、苦手なんだよなー…)


「…わかったよ、話す。桐生も話してくれたんだもんな」


渋々了承し、橘も家のことを話しだす。橘の家は代々ギャンブル関係の会社を継いでいること、そして次期社長として決まってるのが橘だということを知った。意外な事実を知り、俺は驚きを隠せなかった。



(ギャンブル関係の会社ぁ!?聞いたことねぇぞ!)

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