《MUMEI》

だが、驚いたと同時に俺は考えてしまった。


(漫画とかでしか見たことないけど、社長になるってすごい大変なことだよな)


橘の話は続いた。どうやら、橘自身は社長になりたくないらしい。その理由も知った。


(そっか…橘も色々大変なんだな…)


「そんなことも知らずに俺、毎日ケンカふっかけてたのか…」


自分でも知らず知らずのうちに口にしていた。
…そのあと、俺らは見回りの先生に運良く見つかり、一緒に帰った。いつもならそっぽ向く俺だが、橘の事情を知った後にそんな馬鹿なことをするほどガキでもなかった。


(もしかしたら、コイツの取り巻く環境のせいで冷めたふうに見られるのか?…いや、まさかな)



でももし本当にそうなのだとしたら、橘の本当の姿を引き出してやりたいと思う。今までの詫びも兼ねて…


「おい、橘!」

「ん?なんだよ桐生」

「悩みがあったらいつでも言えよな!」

「…はぁ?いきなりなんだよ…」



何故か無償に伝えたい言葉を、そのまま口に出していた。

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