《MUMEI》

糸野のソレにアゲハが首を傾げる
憐れんでしまったのだろうか?
自身の獲物になるかもしれないこの蝶を
「……安易に死を望むな。興が覚める」
多少なり不機嫌な声色で呟きアゲハの手首を掴み上げ
そこに深く残る傷に糸野は頬を寄せる
まるで、いたわってやるかの様な仕草に
「隆臣様、くすぐったい」
アゲハは身じろぎ、はにかんだ様な笑みを浮かべて見せるう
だがソレがアゲハの本性ではないと糸野は触れてみたそこからそう感じ取った
瞬間感じた、恐怖
蜘蛛が蝶に恐れを抱いた、その現実がひどく滑稽で
糸野は喉の奥で押しつぶした様な笑い声を上げ始めたのだった……

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫