《MUMEI》
クラブ
―――――
――――――――


結衣架がいつも
帰って来る時間は
20時ぐらい。

でも今時計はもう22時を
回っている。

「いくら何でも遅い」

心配になった僕は
結衣架に電話する。

トゥルルル
トゥルルル...

『もしもしぃー、皐月兄?』

「あ、うん。今結衣架どこにいんの?」

『えへへ、皐月兄が電話くれたぁー』

「…結衣架、酔ってんの?」

『酔ってないよぉー』

電話の向こうで
うるさい音楽が
聞こえてくる。

「結衣架、…もしかしてクラブにいんの?」

『違うよぉ』

…いや、どう考えても
クラブに流れるような
音楽が聞こえてくる。

「…結衣架、今すぐ帰って来なさい」

『えぇー、もうちょっとだけ〜』

結衣架がこんなに
酔うなんて珍しい。

…まさか。

「分かった僕が迎えに行く、どこ?」

『分かんなぁーい『あ、いたいた結衣架ちゃん、誰と電話してんのー?』『お兄ちゃんだよぉー?』『へぇ、それよりあっち行かない?』『何でー?』『楽しい事、しよーよ』

ブツッ

電話が切れた。

…楽しい事、って。

僕は家を飛び出す。

結衣架は警戒心が
なさすぎる。

ヤバイ、また
僕の結衣架が犯される。

どこのクラブか
知らないけどこの辺の
クラブを片っ端から
あたるしかない。

早く…
早く行かなければ。

結衣架結衣架結衣架!!!

僕は何度も心の中で
結衣架の名前を呼んだ。


―――――
―――――――――


「結衣架ちゃん、こっち、向いて」

とろんとした目で
そちらを向く。

頭が働かない。
頭がぼうっとする。

「これ…舐めて」

硬く肥大した男の性器。

捲られたパンツから
自分を象徴するように
そそり立つソレ。

…駄目、舐めたら駄目。

私は固まる。

「大丈夫、ここには俺しかいないだろ?淫らな姿を見せたっていいんだよ」

それでも私は動かない。

ホントは、ここで
逃げれば良かったのかも
しれない。

それが出来なかったのは
お酒に酔っていて
冷静な判断を
下せなかったから。

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