《MUMEI》
決戦〜プロローグ〜
死臭漂う平原にて

辺り一面には鎧を来た兵士の屍とボロ切れのような服を着た見るも無惨な屍があちこちに転がっている。

生あるものが存在していないかと思えるような惨状の中まだ二つの人影が動いていた。

互いに持つ剣を激しくぶつけ合わせている。

二人の実力はほぼ互角に見えた。

だが、遂に決着がつくようだ。

不意に鉄が衝撃に耐えかね折れる音がした。

それを機に男が叫ぶ。


「これで終わりだぁ!魔王!!」


男の声は若々しく活気に満ち溢れている。

今、この瞬間に輝ける命を燃やし尽くしているかのようだ。

だが、それでいて男の声は生命力と断固たる決意を感じさせるものがある。


「…?折れたか…安物はダメだな。」


それに引き替えこちらの声はどうだろう。

激しく剣を打ち合わせていたにも関わらず息が弾んでいる感じはない。

さらに自分が今まさに相手に討たれる寸前だというのに全く動揺はないようだ。

諦めか、悟りか、ただ呆けているだけなのか。

魔王と呼ばれた男は咄嗟に相手の斬撃を僅かに残った刀身と鍔で受け止めようとした。

しかし…その時、予想出来そうで出来ない事態が起こった。


グリ。


「む??いつの間にか足元に同胞が…」


魔王と呼ばれた男の意識は完全に目下の屍に移ってしまった。


「うおぉぉーーーーー!!!!」


若い男がここぞとばかりに咆哮をあげる。

そして…


ボトリ。


何かが地面に落ちる音が平原に…静かに響いた。

長い戦いに決着が着いた。



魔王と呼ばれた男は死んでしまったようだ。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫