《MUMEI》
「こうして俺は――――」
「…………なるほどね。願いを叶えさせてくれる代わりに、勇者を引き受けてくれるというわけか。なんて男だ。それなりに多くの人間を見てきたが、ここまで面倒な人間は君で二人目だよ」
ほっとけ。
こいつがインキュベーターもどきさんで、勇者になる前に願いを叶えさせてくれる。それなら願いは決まっている。
悪魔よ。存在しなくなれー。
あれ、これ俺がアルティメット化するフラグ?
「残念だが、それはできないよ」
一瞬でフラグは折られた。
というか何だそれ!出来ないとはどういう意味だ!と聞く前にグルルヌは説明し出す。
「君に次ぐ面倒な人間が言ったのさ。なら悪魔を全て消してくれ、てね。可笑しいだろう?そんなことができるなら、勇者なんかいらないだろうに」
「己の力を超えた願いは叶えられないってか」
つうかもうそんな願いをホザいた奴がいたとは…………。
「簡単な願いなら、叶えてあげることは勿論できるさ」
「信用できないけどな。例えばどんなことができるってのさ」
そうだな…………、とグルルヌは思案し、俯く。五秒ほどで何か思い付いたのか、顔を上げた。


「君の片想いの相手と両想いにしてあげよう、というのはどうだろうか」


「よし、交渉成立だ。勇者になろう」
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……………………………………………………
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…………
「え?」
素っ頓狂な声を出し、空中にいるにも関わらず転ける。
「勇者になって、くれるのかい?」
「ああ!俺、勇者になるよ!」
「手のひら返しという言葉がここまで似合う男は初めてだよ…………」
水臭えな。そんなことができるなら最初から言えってんだ。


こうして俺、如月葉月は勇者になったのである。

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