《MUMEI》 虐めなのに、綾女は変わってしまった。 いつも僕を、庇ってくれていたのに……。 綾女は今──… 僕をいじめてる。 綾女が変わり出したのは、中学二年の終わり頃から…。 なんでそうなってしまったのか、原因は…わからない…。 確かなのは、昔とは別人ってことだけ。 綾女は友達の誘いを断ってでも、みんなから気味悪がられている僕と、いつも一緒にいてくれて、僕を元気づけてくれていたのに…僕に優しい言葉を、掛けてくれていたのに…楽しそうに笑っていたのに……。 僕は綾女の笑顔を…優しい目を、もうどのくらい見ていないんだろう…。 もう、どのくらい名前を呼ばれていないだろう…。 綾女のイジメは、僕が今まで受けてきたイジメの中で、いちばん酷く感じた。 僕と綾女は、今年の春に高校生になった。 けど僕は、今まで一度もちゃんとした制服で登校していない。 制服は着ている…。 でも、僕が着るべき制服じゃない。 紺のブレザーに白いシャツ…。 それに、赤いリボンとチェックのスカート。 そんな格好で、僕は登校している。 昔から女の子と間違えられてきんだし、茉希は無口だから、先生やクラスの人たちに男だってバレる心配はないよ。 知ってるのは、あたしと茉希だけ…。 何も心配することないでしょ。 そう綾女は言った。 けど、こんな屈辱的なことは精神的に、すごく辛かった。 女として生活するだけ。 ただそれだけなのに、今まで受けてきたイジメよりも、ずっと辛かった。 前へ |次へ |
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