《MUMEI》
クラスメイト
教室の扉を開けると、誰かが僕にぶつかってきた。

「ごっ、ごめん…っ!!」

そう言って、辺りに散らばったノートや筆記用具を拾う彼女の名前は確か…、矢野佳奈子(ヤノ カナコ) 僕と同じクラスの女子だ。

矢野さんは、僕と同じで孤立した存在だったから、なんとなく覚えてた。
散らばったノートや筆記用具の中に、小さな紙切れを見付け、僕はそれを拾った。

「あっ!!」

紙切れを見て驚いた僕と同時に、矢野さんは声を上げ、紙切れを奪い取った。
矢野さんが奪い取った紙切れは紙ではなく、同じ学校の制服を着た女子と矢野さんが写った写真だった。

「……見た…よね?」

矢野さんに聞かれ、僕はなんて答えたらいいかわからなかった。
確かに見てしまったけど…、誰かわからないくらいに顔を滅茶苦茶にされた写真、見たなんて言いづらかったから。

「見たんでしょ?」

そう聞きながら僕を見る矢野さんの目は、泣きはらした目をしていた。

「…あ、あの…ご、ごめん」

なんでかわからないけど、僕は謝った。
そしてすぐに、声出して大丈夫だったかな?と、思う。

「誰にも言わないで」

矢野さんに強い口調で言われ、僕は頷いた。
幸いにも矢野さんは、僕の声に何の違和感も感じていないようだ。

「絶っっ…対にだよ!?」

念を押す矢野さんに、もう一度頷くと矢野さんは僕に、スマホを持っているか聞いてきた。
そして僕が持っていることがわかると、半ば強引に連絡先を交換した。

まだ何か言いたそうにしていた矢野さんに、急いでるからと言って僕は学校を出た。



学校を出ると綾女の姿は無く、綾女を探しながら家まで歩いていると、スマホがメッセージを受信した。

『佳奈子だよ〜(^_^)今日は深山さんと連絡先交換できてよかった☆もう家着いた〜?』

やっぱりというか、当然というか…送信相手は矢野さんだった。

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