《MUMEI》
誓い
若い男は先ほど切り落とした魔王の首を自らの頭上に掲げ歓喜の声を上げた。

「この戦場で散った誇り高き戦士たちよ!
魔王はこの聖騎士デュラムが討ち取った!
私は誓う!諸君らが眠るこの地を必ずや皆が自由に笑顔で暮らせる場所にしてみせる!
…だから、どうか安心して眠ってくれ!」

言い終えると聖騎士デュラムはガックリとその場でうなだれた。

その時、デュラムの後方から声が聞こえた。


「デュラム様ー!我ら、まだ死んではおりませぞー!」


デュラムは感激に震えた。

自分以外の人間は全滅したと思っていたからだ。

それほどまでにこの戦いは絶望的なものだった。

敵軍の兵力は自軍の倍はあったはずだ。

だが、我らは勝利したのだ。

…いや、まだ完全に勝利したわけではない。

この戦場を進んだ先に敵の城がある。

魔王は倒した。

今城に残っているのは戦場にも出られないような下級兵士ばかりだろう。

制圧は容易いはずだ。

そこまで考えたところで兵士たちが側に寄ってきた。

「デュラム様…。我が軍も大勢やられてしまいましたな。」

中年の兵士が声を掛ける。

「ああ…だが、何とか勝利することができた。…生存者はお前達だけか?」

「…はい。我ら9人だけです。先ほどデュラム様にお会いになる前に生き残っている者がいないか戦場を回ってはみたのですが…。なんとも惨いものですな。」

「仕方ないさ。戦争とはそういうものだ。奴らも死に物狂いで向かってきたんだ。少しの犠牲も出さずに勝つことなどありえない。」

「そうですね…。」

青白い顔した若い兵士が呟く。

「…だが、俺がもっと上手く皆を指揮出来ていたなら…犠牲を減らすことが出来たかもしれない。その点皆に詫びようと思う。
…すまない。」

「とんでもない!デュラム様が指揮していなければこの戦い確実に負けていました!
生き残りは我らだけですが…生きて兵を帰還させるという指揮官の役割…デュラム様は全うされました!ここにいる皆、デュラム様に感謝しております!」

中年兵士が早口に答える。

「そう言ってもらえると俺も少しは心が軽くなるよ。」

聖騎士デュラムが一息つく。

「…よし!いつまでもここで落ち込んではおられん!一度態勢を立て直すぞ!
国へ帰還し、戦力を整え城を一気に攻め落とす!次が最後の戦いだ!皆、奮起せよ!」

「 おおおぉー!!」

兵士達が叫ぶ。

一行は平原を後にしようと歩き始めた。

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