《MUMEI》

新しい環境で、もう謎の足音に脅(おびや)かされる事は無いのだ....
世界は平和に帰ったのだ....
と、つかの間の平穏に微睡(まどろ)んでいた無邪気な幼児の私(もう幼稚園児では無い)の前に....いや、後ろか....奴が帰って来たのです。


アイルビーバック。
ターミネーターのシュワちゃんです。


小学校に上がった頃には謎の足音の恐怖も、すでに記憶の霧の彼方に霞(かす)んでいました。
当時の私はスペースシャトルのパイロットを夢見、公園のぐるぐる回るジャングルジムで日々無重力訓練に明け暮れ、
劇団ひまわりに通っていました。


そんな私が通っていた小学校が、自宅から歩いて三十分の場所にあったのですが、通学路がほとんど山道でした。
(おかげで足腰は鍛えられました。ちなみに住んでいた場所は決して山国では無く神奈川県川崎市です)
山の中をうねうね曲がりくねって続く
坂道は、樹木が道の両側から覆い被さるように繁って昼間でも薄暗く、樹の間越しに見える防空壕跡(ぼうくうごうあと)の洞窟から女の白い顔が覗いていただのとゆう噂は、クラス内の会話では日常茶飯事。
道の所々に立つ『不審者注意』の看板がなおいっそう不安感を煽(あお)ります。
山道の途中では養豚場(小学校の社会見学ではこの養豚場で豚の去勢を見学させられました)と、さらには小学校の通学路に存在するにはへヴィすぎる牛の屠 殺場(とさつじょう)がありました。
毎日の下校時に塀の向こうとは言え、屠殺される牛の絶叫を聞かされる小学生は、全国を探してもそうは居ないでしょう。


そんな環境ならPTAの抗議が来そうなものですが、不思議と小学校の六年間、
そうした話は聞きませんでした。汗

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