《MUMEI》
どこへ?
 学校へ登校してからも、タイキは授業を受ける気にはならなかった。

まったくミユウの行動は訳がわからない。

 なぜタイキの部屋に転がり込んだのかも疑問だが、彼女の正体がもっと疑問だ。
ただ者ではないことは確かなのだが。

 教室の窓から外を見ながら、ふとタイキは気付いた。

そういえば、あの車はどこに置いたのだろう。
タイキが住むアパートの近くに駐車場はなく、周辺にその派手な車はなかった。
 昨日、やはり警察に捕まったのだろうか。
そして車を没収され、寝床を求めてタイキの元へ来たのか。

 なんとなく辻褄があった自分の考えに納得して、タイキは見てもいない教科書をパラパラとめくった。


 そして放課後、タイキはいつもより早足で下校した。
 朝、出る前に釘を刺したとはいえ、やはりミユウが部屋の端末にいたずらしているかもしれない。
データをいじられるのだけは勘弁してもらいたい。

 そんな焦りにも似た気持ちを抱えながら歩いていると、前方に見覚えのある後ろ姿を発見した。

「ミユウ?なにやってんだ?こんな所で」
 彼女が歩いて行く方向は、旧市街地。
今ではほとんどゴーストタウン化した地域の方だ。
声をかけようとしたが、彼女はすぐに角を曲がってしまった。
「……まあ、いいか」
 泊まるところがないと言っていたのだから、また部屋に来るだろう。
そう思いながら、タイキはアパートへ戻った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫