《MUMEI》

目が覚めればそこは、見覚えのある部屋で。



「…ど、して……」



信じられない、というように美香は首を横に振った。
手足を縛られているこの状況にも、
この場所が幼馴染みの部屋であるということにも。



「…あ、起きた?」



聞こえたのは優しげな何時もの幼馴染みの声。
全く、何も違わないというのに……どこか空恐ろしくて美香は思わず身をよじった。



「…ねぇ、美香。僕が今までどれほど我慢してきたと思う?
勿論、美香の事だから最後までなんてしてないだろうけど……他の男といるのを見るたびに苛立ってしょうがなかったんだよ?」



優しい、優しい幼馴染みは……


目を細めて、美香に呟いた。


「…それももう、限界」


「……颯……」



美香が怯えの混じった声音で幼馴染みの名前を呟く。


しかし颯は無慈悲にも、微笑んでゆっくりと美香に近づいた。

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