《MUMEI》 その何かに僅かばかり興味を抱いた山雀 対峙する相手へ探りを入れてみる事に 「……此処は何か、変わった村なのか?」 知らぬ風を装い尋ねる事をすれば、相手の顔色が明らかに変わる どうやら何か有る事に間違いは無いらしい 「……関係、無い。ヒトにも、鳥にも」 感情の籠らない、まるで機械の様な声が帰り、向けられる表情は憂鬱 どうなってしまっているのだろうと山雀は怪訝な顔だ 「……鳥の、臭い」 相手が僅かに鼻を鳴らし ヒトだと思い込んでいるらしい山雀から何故その臭いがするのかと首を傾げる その実、との生き物も目で見える情報でしか他を測る事は出来ないらしく ヒトの姿を取る山雀を、その通りヒトだと信じて疑わない 「……お前、人間の癖になんでそんなに鳥臭い?」 相手は臭いをかぐように鼻を鳴らしながら山雀の周りをまわる しばらくそれを続け、そして相手がハット目を見開いた 「……お前、(鳥)なのか?俺たちを、殺しに―― っ!?」 相手の言葉を遮るかの様に山雀の手が相手の口元を鷲掴む 頬の骨が軋む音を立ててしまうほどのソレに、相手がもがく事を始めていた ヒト・鳥そのどちらにも憎悪を向ける相手 一体、この村は何なのだろうか? つい怪訝な表情をその顔に浮かべてしまえば 「……此処は咎ある者達の集落です」 相手の更にその奥から聞こえてきた声 そちらを見やれば老人が一人 杖を支えにおぼつかない足取りで山雀へと歩み寄ってきた 「……この村の者は皆、ヒトと鳥との合いの子なのです」 聞かされたそれに、山雀は瞬間理解ができず更に怪訝な顔 ヒトと鳥が交わるなどあり得ないと 「そう。本来ならば有り得てはいけぬ事。それゆえにこの集落は咎人の村と言われているのです」 共存するヒトと鳥、そしてその子供 確かに、この場に有るのは咎ばかりだった 「……貴方様は純粋な鳥様でございましょう?何故この村に?」 「俺は主の言いつけで餌を探しに来ただけだ」 「もしや、親鳥の孵化、でございますか?」 何をしにと尋ねて置きながらも大体を理解している様で 何かを思い出しているのか、表情を歪ませて見せる 「……あなた方は、その為に咎有る者として私達を産み落とさせたというのですか?」 その表情は徐々に怒りを顕わに憎悪の念を山雀へと向ける 餌になる、唯それだけのためにと その問いに山雀は答えて返すことはせず それを相手は応と捉えたのか、顔色が僅かに青ざめていった そしてその場に膝を崩してしまうまで、そう時間は掛からなかった 「ババ様!!」 座り込んでしまった老人を支えてやるかのように駆け寄ってきた人影 現れたその姿に、山雀は僅かに目を見開く ヒトと鳥が歪に混じり合ったその風体 辛うじてヒトの顔を成すそれが、その人物が人である事を物語っていた これこそが正に咎人の姿 「……生きて、いるのですよ。私達は、今此処に!」 否、過ちを犯したのは目の前の人間共ではない トリと交わりを持ったヒトの親の責任だ 「生きている事は、咎ではないのです。寧ろ、私達に与えられた罰なのです」 ヒトでもなく、鳥でもない 半端な存在として生きていくには、この世界はあまりに不親切だ どちらからも半端者と罵られ、虐げられる 耐えるには同じ境遇の者同士、身を寄せ合って生きていくしかない だが、その境遇を憂いてやるほど、山雀の感情は穏やかではない 「……取り敢えず、お前でいいか」 低い呟きの後、山雀はその咎人に手を伸ばす そう、自身が手にかけるのは決してヒトではない ヒトでなく、鳥でもない、唯の半端者 罪悪感など当の昔に捨ててきたはずなのに、と 瞬間、躊躇してしまいそうになった自身を山雀は嗤う 「……嫌、嫌ぁ!!」 叫ぶ声を上げながら子供の様に嫌々をする相手へ蔑む様な一瞥を向け そして徐に相手の首筋へと手刀を強く打ち付け、意識を飛ばしていた 崩れ落ちる相手の身体 それを手荷物よろしく肩へと担ぎ上げ、山雀は地面を打ち付け上へと飛んで上がる そうして向かったのは(巣) 「……お帰り、山雀」 少女ので向けに返事もほどほどに返すと 山雀は持ち帰ってきた餌を少女の前へと放り投げていた 「これで良いか?」 前へ |次へ |
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