《MUMEI》
異変
歩き出した直後、デュラムの身に奇妙な出来事が起こった。

正確にはデュラムの所持品に異変が起きたのだ。


「盛り上がっているところ悪いが…
そろそろ笑いを堪えるのが苦痛になってきたんでな。…少しばかり喋らせてもらうぞ。」

デュラムは驚愕した。

自分が腰に差している剣が突然喋り出したと思ったからだ。

急いで剣を抜き確認する。

…特に異変は見付からない。


「…?デュラム様?如何しましたか?」

少し先を歩いていた若い兵士が声を掛けてくる。

「何でもない。先に行ってくれ。」

「…わかりました。」

再び先を歩く兵士。


「クク…おもしろいな…人間。けどな…残念なことに剣が喋るのはおとぎ話かファンタジー小説の中だけだ。…もっと現実を見ろよ。」


そこでデュラムは確信した。

自分が身に付けている物で喋ることが出来る物…その声の出所を…。

信じたくはなかった。

ありえない事だと思った。

デュラムはゆっくりと…ベルトに括り付けていた布袋を外す。

袋の中身は…我が国の王に献上するための…


魔王の首だ。

魔王は確かに倒した。

あの手応えは間違えようがない。

頭部を切断したのだ。

生きていられるはずがない。

しかし…だとすれば今のこの状況は何だ?

…魔王の亡霊だとでもいうのか?

死してなお俺を呪い…付け狙うつもりなのか?

…とにかく確認だ。

デュラムは袋を開け魔王の頭髪を掴む。

そして…取り出す。



…。

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