《MUMEI》 反撃用意ユウゴは家庭科室、理科室など特別教室を順番に回り、使えそうな物を両手に抱えて戻ってきた。 包丁などの刃物が銃を持つ相手に有効とは思えないが、一応タオルを刃の部分に巻いて持って行くことにした。 そして、職員室のドアの鍵を手先だけ器用に動かして開け、中へ入る。 そこではユキナがさっきと同じ体勢でまだ眠っていた。 あれから三十分は経っている。 そろそろ起こしておいた方がよさそうだ。 「おい、そろそろ起きろよ」 両手の荷物を机に置きながらユウゴは言う。 しかしユキナには聞こえていないようだ。 「おいって!」 仕方なく、ユウゴはユキナの肩を掴んでその体を揺らした。 すると、突然ユキナはバッと顔を上げたかと思うと、ユウゴから離れるように横へ転がった。 「………おい、なにやってんだ?」 ユキナの肩を掴んだ体勢のまま、ユウゴは言った。 「え、あれ?」 ユキナもキョトンとした表情でユウゴを見返している。 「……あのな、寝ぼけんなよ」 「そっちがいきなり肩掴むから、反射的に逃げたんでしょ」 「起こしただけだろ。それより見ろよ、これ」 ユウゴはそう言うと、机の上を指した。 「…なに?これ、アルコールランプ?」 ユキナはそのうちの一つを手に持った。 「そう。あと、包丁とかよくわかんねえ薬品類。ガスボンベとかもある」 「……で、何に使うの?」 「もちろん、反撃にだよ」 ユウゴは力強く答える。 しかし、ユキナは眠そうに欠伸をしながら「アルコールランプで反撃?」と首を傾げた。 「まあ、何かに使えるって。薬品だって混ぜたら爆発するかもしれないし」 「……巻き添えにならなきゃいいけどね」 「とにかく、ほら、ガスボンベとチャッカマン」 ユウゴは言いながら、その二つをユキナに手渡した。 「逃げるにも限界がある。幸い学校には隠れる場所が多い。あと数時間、隙をついて反撃するぞ」 ユキナはチャッカマンが使えることを確認しながら小さく頷いた。 前へ |次へ |
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