《MUMEI》
敵意
暫く黙りこんだ後…デュラムは答える。

それは決意と覚悟でもあった。

「…魔王。お前はその事実を俺に教える事で俺自身の戦意を奪おうというのだろう。
見苦しい悪足掻きだ。…だが、この聖騎士デュラムを舐めるな。
たかだかお前程度の力しか持たん魔王が何十匹いようが俺の闘志は消えやしない。
向かってくるなら片っ端から蹴散らしてやるまでだ。」

魔王は感嘆の声を上げる。

「ほほう!何と見上げた根性だ!シビれるね!俺のハートまで熱くなりそうだ!…っと今は首しかない訳だが…フフフのフ♪」

「貴様がそんなふざけた態度をとれるのもそろそろ終いだ。」

「おいおい。まあ待てよ。とどめはいつでも刺せるんだ。俺の情報はもう一つ残っているぞ。それを聞いてから生首粉砕!!…でも遅くないはずだ。」

デュラムは地面に叩き付けようと振り上げた腕と掴んでいた魔王の首を下げる。

「うむ。よろしい。人の話を聞くことは大切だぞ。…例え相手が魔族であったとしてもな。」

「…で?最後の情報は何だ?」

魔王はなぜか唇の端を歪めて妙な顔をしている。

なかなか話し出そうとしない。

「…聞いているのか?気持ち悪い顔を止めてさっさ話せ。それとも話は終わりか?ならば…。」

「…いや、話はある。大切な話がな。」

魔王はゆっくりと話し始めた。

「俺は先ほどお前にウルフ族だの巨人族だのと魔族にもそれぞれ種族があると話したよな?」

「それがどうした?貴様ら魔族の姿形なんぞどうでもいい。俺達人間にとって貴様らは倒すべき敵以外の何者でもないんだ。それを認識できる容姿であれば狼だろうが鬼だろうが関係ない…駆逐してやるまでだ。」

「…。」

沈黙する魔王。

そして、ボソボソと呟く。

「お前は…いや…お前らはと言った方がいいのか?…まあ、まだ決めつけるのは早いか…。」

デュラムに苛立ちが募る。

「また意味不明なことを… 」

「お?悪い悪い。独り言だ。お前が気にしなければならんことはこれから話す。よーく耳の穴をほじくり回して聞けよ。…お爺さん。」

「…。」

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