《MUMEI》
過る不安
今日は置いて行かれたけど、いつもは一緒に帰ってるし、行くときだって一緒だから。
昔とは変わったけど、壊れてなんかいない。

『親友に好きな人を取られても?』

矢野さんからの返信を見て、僕はまた返答に困った。
綾女は僕の親友で僕の好きな人なんだから、矢野さんが言う状況には、なり得ない。

『親友はそんなことしないよ』

そう返すと、矢野さんから返信がこなくなった。
僕は少し安心して息を吐いた。それから、そのまま綾女の家に向かった。

そもそも学校に戻ったのは、綾女にノートを取ってくるように言われたからなんだから、このまま渡さないで帰るわけにはいかない。
それに僕と綾女の家は、すごく近くて小学生の頃から、お互いの家を行き来してたし、今だって一緒に帰ってたりしてて…。
一日一回は綾女の家に行くのが日課になってるのに、今日だけ行かないなんて、なんだか落ち着かなかったんだ。

……だけど、綾女の家のインターホンを鳴らしても、誰も出て来なくて…僕は、綾女のアパートの前で座って待つことにした。





──親友に裏切られたらどうする?

──裏切られたんだから、もう壊れてんじゃん




矢野さんからのメッセージが、頭を過った。


…綾女が僕を置いて行ったのも、”裏切り“なのかな。
僕をいじめるようになったり、僕を置いて行ったり…僕はもう、綾女に沢山裏切られてるのかな…。


僕たちの関係は……もう、壊れちゃってるのかな…。



そんなことを考えていると、また矢野さんからメッセージを受信した。

『茉希ちゃんが見たあのプリクラでさ〜、あたしの隣にいんのあたしの親友だったんだ〜』

ぼーっとしてたら、余計なことばかり考えちゃいそうだったから、矢野さんからのメッセージを開いたけど、やっぱり楽しいなんて思えるものじゃない。


確かに、あの写真は気になるけど、僕には関係のない話だし…。

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