《MUMEI》
強引な彼女
スマホがメッセージを受信した。
もう画面を見なくても、矢野さんだってわかる。

『茉希ちゃんの親友は幸せだね』

僕は綾女を待っているときに、感情のままにメッセージを送っていた。
矢野さんからのメッセージを見て、少し気持ちが楽になった。

『幸せかな?』

そう返信すると、すぐにメッセージが返ってきた。

『うん、幸せだと思う(´∀`*)唯一無二の存在って感じ。あたしも茉希ちゃんみたいな人が親友だったらよかった』

綾女は僕といて幸せそうに見えるんだ…。
唯一無二の存在……確かに、僕にとって綾女は掛け替えない存在だ。


綾女は…?

綾女は…どう思っているんだろう…。
もし、綾女と僕が恋人同士になったら…。


僕はパソコンに、お気に入りのアダルトDVDを入れて再生した。
このDVDを観るのが、いつからか日課になっている。
画面の中の男女を、綾女と自分自身に置き換えて観ていると、少し満たされた気分になれる。










…──ピンポーン










丁度いいところで、チャイムを鳴らす音がした。
僕はひとつ舌打ちをして、玄関へ向かった。


ドアを開けると、外にはTシャツに短パン姿の綾女が立っていた。

「上がるね」

そう言うと、綾女は強引に家に入って来た。

「ま、待ってよ」

僕は慌てて、綾女を止めようとした。


けど綾女は一瞬、不敵な笑みを浮かべてから、 僕の制止も聞かずに二階に上がって行く。

「待って、待ってよ、今はダメなんだ!」

綾女が僕の部屋のドアの前で立ち止まって、振り返った。

「なんでダメなの?」

「それは……」

「言えないの?」

僕はなんて答えたらいいか、わからなかった。 まさかエッチなDVDを見てたから、なんて言えるわけがない。

「…言えないなら入るから」

そう言って綾女がドアを開けた。


部屋からは女の甲高い声が聞こえてくる。 綾女は少し驚いた感じだったけど、すぐに部屋に入って電気を点けると、床に置いてあったDVDのパッケージを手に取った。

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