《MUMEI》

湯布院は最近気に掛けて先に一人で帰ってくれる。僕たちのぽっかり空いてしまった時間を埋めさせてくれるような。あいつは意外といい奴らしい。

「錦ちゃん?どうしたの、ぼーっとして」
「ぅあ…ごめん。帰ろ」

二人きりで帰るのも久しぶりでなんだかぎこちない。それに、隠してきたこの気持ちが溢れ出てしまいそうでひやひやする。

……ぱっと、目が合った。

反射的に目を逸らして俯いてしまった。こんな違和感、熱ちゃんが見逃すはずないのも分かっていた。

何も言わないのも……。

「ねえ、錦ちゃんは……」
「えっ」

びっくりした。熱ちゃんのことだから、何も言い返さないんだろうと決めつけていた。

「そんな驚かなくても」
「だって、珍しいから。続けて」

熱ちゃんの言おうとしていた言葉が気になる。早く聞きたい。ただ、僕は平静を保てるかが問題で。

熱ちゃんは頷いて口を開いた。

「うん……錦ちゃんはさ、俺のことどう思ってるの?」
「っ!!」

まさか、熱ちゃんの口からそんな言葉が聞けるなんて思ってもみなかった。

「……//////」
「ねえ、教えてよ」

夕焼けに照らされ影がかった彼の顔が色気付いていて。眼鏡の奥の瞳は一層真っ直ぐに僕を見つめる。

雰囲気に呑まれそうだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫