《MUMEI》

巣のある寄生木まで戻ってみれば、そこには異様な景色が広がっていた
親鳥は確かに孵化していた
しかし、その全身がすべて寄生木に取り込まれていて
一体どういう状況なのかを山雀は少女に問うた
「それが分かっていれば何とかしているわ。こんなこと、初めてだもの」
どうしたものか悩み始めた少女
山雀は寄生木を仰ぐように見上げると徐に脚元をけりつける
「……山雀?」
何をするつもりか、との少女からのソレに、様子を見にと山雀
そこで待っている様に言って利かすと昇る事を始めた
これ程までにかっただろうか、この寄生木は
上がれど上がれど見えない先に若干の動揺を覚えてしまいながら、それでも上り続けていると
ようやく、その先がうっすらだが見えてくる
そして其処に現れた一つの影
目を凝らしよく見てみればそれは、あの雛鳥だった
「……少し見ないうちに随分と立派になったもんだな」
巨大に育ったそれを見上げ、山雀はまるで他人事のようにつぶやく
間近に寄ってみれば、その親鳥はまるで山雀を拒絶するかの様に毛を逆立てた
だが次の瞬間、何かがはじけるかの様な音が聞こえ突然に雛鳥が事切れる
すでに事切れているのか、動く事も鳴く事もしない雛鳥を
親鳥はく鳴く声をあげると食む事を始めていた
骨を噛み砕く音、飛び散る羽根と血液が山雀を汚していく
これは、既に親鳥ではない
己が欲に従順なだけの、唯の獣だ
山雀は深く溜息を吐くと、寄生木を降りた
「……私も、いつかああなってしまうの?」
降りるなり、、重むろな少女の声
彼女には、彼女自身が親鳥で有るという記憶がない
山雀が(子)として生まれ落ちた時からそうだった
そんな彼女へ、山雀は真を語るでもなく古くからの連れだと説明をしていた
思い出して、しまったのだろうか?
忘れてしまったのならば思い出さない方がいいと、その実を伏せてきたというのに
「……私は、嫌。あんな風には、なりたくない――!」
俄かに怯え、降る出す少女
その震えは段々とひどくなり、このままではいけないと山雀は少女を肩へと担ぎ上げる
「山雀!?」
驚く声を上げる少女に構うこともせず、山雀は木を降る
そして眼下にヒトの集落を見つけるなり、なぜか降りていた
なぜ、人里などに
視線のみでそう訴えてくる少女へ
「……少し、寝とけ。俺も寝る」
これからどうすべきかを早急に考えなければならない
だが今はそれを頭が拒絶している
ならば眠るしかないだろうと
手近な空き家へと入り込み、山雀は少女を連れ寝に入ったのだった……

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